新作Flash「ぼくのみたせかい」作品解説

By 虹風 虹奈1 Comment

ぼくのみたせかい

新作Flash「ぼくのみたせかい」を公開しました!
Hirameki2012参加作品です。なんとなんと大トリに選ばれてしまいました!きゃー!
正直トリは別の方だと思っていたのでビックリしました。
「大トリになっちゃったりしないかなー」とか妄想はしちゃってましたけども!!!

■大まかな解説

外の「せかい」をあまり知らない少女「ニコ」が、
様々な事象を通して、新たな「せかい」を見出すお話です。

三年振りの新作ということで、沢山の新しいことに挑戦してみた作品となっております。
2009年に公開した「remains」まで、
タイトル・リプレイ画面以外全てベクタ画像を用いていたのですが、
今回思い切って、全てSAIとGIMPを用いて描いたラスタ画像を使用しました。
更に今回、沢山キャラをアニメーションさせることに挑戦してみました!
今までなかなか上手にできなかったアニメが、今回何故かすんなり作れて自分でも驚いています。
ニコちゃんが微笑むシーンは自分でも気に入っていたり!

実は、文章を一切入れずに映像を作ったのは今回が初めてだったりします……!
映像のみで物語を伝えられるよう、構成も頑張って考えてみました。
後はFlashのページを少し豪華にしてみたりしました。映像の縦横比も16:9になってたり!

そしてそして、なんと今回トールさんにBGMを作って頂きました!!
お願いしてからたったの一日(!)で作って頂けまして、仕事の速さにすごく驚いたりしました。
曲に関しての知識が無く、曖昧なイメージしか伝えられなかったにも関わらず、
こんなに素敵なBGMを作って頂けて本当に嬉しかったです……!
本当にありがとうございました!!

さてさて、毎回恒例のオマケも今回は豪華にしてみたりしました。
普通に流れる映像の他に、隠し映像が二つあります!!

以下、隠し映像を含めた詳しい作品解説となります故、
自力で見つけたい! 解釈したい! という人は見ないことをオススメします。

■3つの「せかい」への行き方

先述した通り、この作品には通常ムービー1つ、
隠しムービー2つの計3つのムービーがあります。
ここでは通常ムービーを「PHASE1」、
2つの隠しムービーをそれぞれ「PHASE2」「PHASE3」と呼ぶことにします。

隠しムービーはリプレイ画面であれこれすると行けるようになっており、それぞれ、

  • PHASE1⇒PHASE2
    PHASE1リプレイ画面のビー玉をクリック
  • PHASE2⇒PHASE3
    PHASE2リプレイ画面で右クリック→「再生」を8回してから、Nikolaas.Aの「A」をクリック

という操作をすることによって見ることができます。

 ■1つ目の「せかい」 – 外の世界への期待

1つめの「せかい」(=PHASE1)では、未知なる外界に対する「希望」を表現しています。

この物語の主人公である「ニコ」は、
幼い頃から、とある理由によって森の中にある建物に幽閉され、
外の世界を知ることが敵いませんでした。
そんな彼女は、部屋の中から見える風景や絵本からしか世界を知ることができないため、
それらを組み合わせて自分が作り出した世界を、部屋の壁や床に絵を描くことにより表現し、
自分の世界を広げようとしています。

しかし、残念ながらそれは既知の事実を組み合わせただけに過ぎず、
そこから新しい何かを生み出すことは、今の彼女には不可能だったのです。

そんな彼女が、いつも通り壁に絵を描いている時、とある変化が訪れます。
外から大量のビー玉が降り注いできたのです。
実は彼女、「ビー玉」というものの存在すら今まで知りませんでした。
きらきらと光るそれを初めて目の当たりにしたニコは、
また一つ、世界の美しさを知ったのでありました。

この「ビー玉」はニコにとっての「希望」そのものです。
このようなまだ見ぬ「綺麗なもの」が、
まだまだ外の世界には沢山あるのではないかという期待に彼女の胸を膨らませます。

また、壁に描かれた絵が冒頭と終盤で異なっているのは、
冒頭の絵では木の上から他者を眺める「傍観者」という存在でしかなかったニコが、
ビー玉というきっかけにより、
もっと外の世界を知りたい、他者と関わりたい、という気持ちを抱いたことを表しています。
その結果、壁に描かれた絵が鳥(=他者の比喩)と戯れているものになりました。
更に、この描写により「壁の絵にはニコ自身の心情も現れる」ということを示しています。

■2つ目の「せかい」 – 期待と共にある「恐怖」

2つ目の「せかい」(=PHASE2)では、未知なる外界に対する「恐怖」を表現しています。

PHASE1⇒PHASE2へ行くためには、ビー玉をクリックする必要があります。
このビー玉もまた、前述した通り、「希望」の象徴であります。
鳥籠の中のビー玉、籠の中の「希望」……
つまり、このビー玉は、部屋の中に幽閉された「ニコ自身」の象徴でもあるのです。
もっと外の世界を知りたい、外の世界に出ていきたい。
けれど私は鳥籠の中、外へ出ることは敵わない……
彼女はそう思い、自分の気持ちをも胸の中の籠に閉じ込めてしまうのでした。

PHASE2ではPHASE1と対照的な事象がニコに降りかかります。
部屋が突然暗闇に覆われてしまったのです。
太陽が雲に隠れてしまっただけなのかも知れませんが、
彼女にとってこれは「恐怖」以外の何物でもありませんでした。
その「恐怖」が、彼女自身を更に鳥籠の中へと追いやってしまうのです。

更にこの「恐怖」という感情が壁の絵にも現れ、
ニコ自身もすっかり忘れていた過去の記憶を呼び起こし……

■3つ目の「せかい」 – 籠の中の鳥

3つ目の「せかい」(=PHASE3)では、
ニコ自身の「結局のところ一番怖いのは自分自身なのではないか」という思いを表現しています。

PHASE2⇒PHASE3に行くための方法はとても複雑かつ見つけにくいものになっています。
これは、この「せかい」そのものが彼女にとって「あまり見られたくないもの」であり、
「自分自身も直視したくない問題」であることを暗喩しています。
右クリック再生が八回なのは、ニコの本名である「Nikolaas」が八文字だから。
その後にクリックする「A」は苗字。
愛称ではない、本当の名前(≒本当の自分)を見つめることにより、
この「せかい」への扉は開かれるのです。

さて、その容姿や「自分の心情が壁の絵に現れる」という事象からも、
彼女は普通の人間とは違う「力」を持っていることが伺えます。
PHASE3では、彼女のその「力」が意図せず溢れ出てしまう様子を描写しています。

普段通り絵を描いていた筈が、その絵は赤色(=血の色、死の象徴)に染まってしまう。
PHASE2では、自分の引き起こした現象ではないことから恐怖を覚えていましたが、
今回、部屋中を真っ赤に染めたのは他ならぬニコ自身。
手が真っ赤に染まっていたり、返り血が付いている描写で、
「自分がやった」という事実を強調しています。

自分の持っている「力」。その正体は、彼女自身さえも知りません。
そんな「未知なる自分」への恐怖。
彼女は外の世界だけではなく、自分自身の中に広がる「せかい」すら殆ど知らない事実に気付きます。

自分すら知らない、未知なる「力」によって、他の人を傷つけてしまうかもしれない。
知らず知らずのうちに、他人を傷つけてしまっているかもしれない……
同じような恐怖に、駆られたことはありませんか?
自分が何気なく発した言葉が、他人を傷つけてしまっているかもしれない。
自分の何気ない行動が、他人を傷つけてしまっているかもしれない……
ニコも、同じような悩みを抱えています。
「他の人と関わりたい」「外の世界に出たい」と思いつつも、
自分自身がその「外の世界」を傷つけてしまうのではないか、壊してしまうのではないか、
という恐怖に体を震わせています。
このPHASE3で、彼女は自分自身と直面することになるのです。

そして彼女は……

■「ニコ」という人物について

今まで3つの世界について解説してきましたが、それでも不明瞭な「ニコ」という人物。
ここでは映像内に散りばめられたヒントを拾い上げ、
現時点から推測できる彼女の人物像について解説したいと思います。

まず、一番彼女の境遇を物語っているのは3つのリプレイ画面です。
PHASE1のリプレイ画面は、前述した通り「籠の中に居るニコ自身」を象徴しています。

さて、問題は残り二つ。
PHASE2リプレイ画面では、輸血パックに「Nikolaas.A」という文字が書かれています。
PHASE3の解説に書いた通り、この「Nikolaas.A」とはニコの本名。
元ネタは鳥類学者である「Nikolaas Tinbergen(ニコラース・ティンバーゲン)」です。
さて、苗字である「A」の示すものとは、何なのでしょうか?
幽閉された彼女は、誰に名付けられたのでしょうか?
そもそも彼女に家族は存在するのでしょうか?
何故彼女は幽閉されているのでしょうか?
この輸血パックの中身は、何の血なのでしょうか……?

「ニコ」という人物の正体について最も重大なヒントが描かれているのが、PHASE3リプレイ画面。
籠の中の鳥。PHASE1リプレイ画面で象徴されているものと一緒です。
更に、鳥の毛の色はニコの羽や髪の毛の色と一緒……
そう、この鳥こそが「ニコ」なのです。

ニコは元々人間ではありませんでした。
では、何故今人間の姿形をしているのでしょうか?
答えは、PHASE2リプレイ画面の「輸血パック」。
また、PHASE2のジャミングのような場面にも、輸血パックを刺されているニコが描かれています。
この「血」こそが、ニコの姿を変容させた要因です。
PHASE2の壁の絵に描かれている影は、この「血」を無理矢理ニコに与えた者たち。
彼らは何故、一体何の目的で彼女にその特殊な血を与えたのでしょうか?
そしてこの特殊な血は、誰の血なのでしょうか……?

そして「鳥」に対し与えられた「鳥類学者」の名。
これは、ニコは自分自身の謎を解き明かしていく人物であることを表しています。
自分の中の不明瞭な部分に気付いた彼女。
これから彼女は、どうやって彼女自身について解き明かしていくのでしょうか……

■あとがき

Q.伏線多すぎじゃねーかボケナス
A.続きはwebで!!

作品解説、いかがでしたでしょうか。
この文章によって、この世界観に興味を持っていただければこの上なく嬉しいです。
ニコのお話はまだまだ始まったばかりですが、
この子が今後どうなっていくのか、楽しみにしていてください!!

「ここはどういう意味なの?」という点がまだありましたら、
どしどし聞いて頂けると嬉しいです! 答えられるだけお答えしたいと思っています。

あ、あとニコちゃんのイラストください。(乞食)

(追記)
草の模様について書き忘れてました!!!
全てのタイトル画面で、ニコに草が巻き付いている描写があります。
これは、「その場に縛られている」という意味。「鳥籠の中」と同じような意味です。
更にニコは鳥なので、「飛べない鳥」ということも暗喩していたりします。
彼女がその翼をはためかせ、飛び立てる日は来るのでしょうか……


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Flash, 作品解説, 創作

One Comment to “新作Flash「ぼくのみたせかい」作品解説”

  1. […] ※過去作「ぼくのみたかい」のネタバレを多く含みます。※ ※視聴・作品解説の閲覧後に読むことを強く推奨致します。※ […]

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